○海岸法の施行について

昭和三十一年十一月十日

/三一農地第四八二二号/港管第二七三九号/建発河第一〇七号/

都道府県知事、地方建設局長、北海道開発局長、農地事務局長、港湾管理者の長、漁港管理者の長あて

農林事務次官、運輸事務次官、建設事務次官通達

五月十二日に昭和三十一年法律第百一号をもつて公布になつた海岸法は、同法(附属法令とともに十一月十日に施行されたが、左記事項に御留意の上同法の施行に遺憾なきを期せられるとともに、すみやかに関係事項を貴管下関係行政機関の徹底方取り計らわれ、同法に基く海岸行政の運営に遺憾のないよう格別の御配慮を煩わしたく命により通達する。

第一 海岸保全区域の指定

1 都道府県知事が海岸法(以下「法」という。)第三条第一項の規定により海岸保全区域として指定する区域の基準は、おおむね次のとおりとすること。

一 既設の海岸保全施設の存する区域

二 現在海岸保全施設に関する工事を施行中の区域

三 将来、海岸保全施設に関する工事計画のある区域

四 前各号に掲げる区域以外の区域で、海岸の保全上特に行為の制限を行う必要があると認められる区域

2 海岸保全区域は、海岸を災害から防護するため必要な最小限度の区域に止め、国民の権利を不当に制限することのないよう十分配慮すること。なお、法第三条第三項ただし書に規定する五十メートルをこえて海岸保全区域を指定するやむを得ない必要があると認められる場合は、おおむね次のとおりであること。

一 海岸保全施設が水際線より五十メートルをこえる地域に設置されている場合又は設置される計画が確定している場合

二 侵食が甚しく海岸の保全上必要があると認められる場合

3 海岸保全区域に指定することのできない区域は、法第三条第一項ただし書に規定しているところであるが、そのほか、国又は地方公共団体が設置し、又は管理する飛行場の区域並びに鉄道用地(地方鉄道法第十五条各号に掲げる土地をいう。日本国有鉄道の用地についてもこれに準ずる。)及び軌道用地(軌道法第二十六条の規定により準用する地方鉄道法第十五条各号に掲げる土地をいう。)については、海岸保全区域の指定を行なわないものとすること。

4 海岸保全区域の指定の公示方法は、海岸法施行規則(以下「規則」という。)第一条第一項に規定されているが、海岸保全区域の指定は、国民の権利義務に重大な関係をもつものであるから区域の境界が不明確にならないよう措置すること。なお、同項に「一以上」とあるのは、同項に掲げる各号のうちいずれか一つにより区域を明示すれば足りるが、それだけでは十分区域を明示することができない場合においては、二つ以上の事項により行うものとする趣旨であること。

第二 海岸管理者

法第五条第二項に規定する市町村長が管理することが適当であると認められる海岸保全区域は、おおむね次に掲げる区域以外の区域であること。

一 現在都道府県が管理している区域

二 海岸保全の利害関係が二以上の市町村にわたる区域

三 市町村長が管理することが財政上又は技術上困難な区域

第三 主務大臣の直轄工事

1 主務大臣が直轄工事を施行する場合における権限代行の範囲

主務大臣が直轄工事を施行する場合においては、主務大臣が海岸法施行令(以下「令」という。)第二条第一項の規定による権限を代行し、その代行の範囲においては海岸管理者は権限を行使することができないものであること。なお、主務大臣が法第七条又は第八条の権限を代行した場合における法第十一条の規定による使用料又は土石採取料の徴収は海岸管理者が行うものであること。

2 直轄工事区域の公示

主務大臣が直轄工事を施行する場合における公示は、規則第二条の規定によりその工事の区域、工事の種類及び工事開始の日を官報に掲載して行うものであるが、直轄工事の施行を完了又は廃止した場合においても、これに準じてその完了又は廃止した日の日付をもつて官報にその旨を公示するものとすること。

第四 海岸保全区域の占用及び海岸保全区域における行為の制限

1 法第七条第一項の規定による占用の許可は、国有財産法上の公共用財産たる国有海浜地について行うものであるので、その許可に際しては、当該公共用財産たる土地の公共的性格に十分留意の上、その用途又は目的を妨げない限度において、かつ、海岸の保全に著しい支障を及ぼすおそれがないと認められる場合に限り許可をするよう、その運営の適切を期せられたいこと。

2 海岸保全施設以外の施設又は工作物を設けて占用することとは、一定の区画の土地を排他的独占的に継続して使用することであり、耕作の用に供する場合、材料置場とする場合等も含まれるものであること。なお、漁具、漁獲物の乾場、船揚場、穀物乾場、牛馬のけい留のための施設等簡易軽微なものについては許可を要しないものとすること。

3 占用の許可の際には、規則第三条に規定する申請書の記載事項に関する条件のほか、占用に伴う第三者との関係に関する条件、附帯工事に要する費用に関する条件、原状回復に関する条件、許可の効力が失効する場合の条件等、個々具体的な場合において種々の条件を附することにより占用が海岸の保全に支障を与えないよう措置すること。なお、右の条件を附するに当つては、占用の許可を受けた者の権利を不当に制限するような義務を課することのないよう十分配慮され遺憾のないように期せられたいこと。

4 海岸保全区域における制限行為は、法第八条第一項各号に掲げるとおりであるが、これらに該当する行為のうち、令第三条に掲げるものは許可を要しないのであるから次の要領に従つて措置されたいこと。

一 他の法律の許可等を受けた行為は、許可等の内容となつている行為のみに限られ、許可等を受けた行為に関連する他の行為又は許可等を受けた行為をするための他の行為を含まないものであること。従つて、例えば、公有水面埋立の場合、当該埋立という行為そのものはこれに該当するが、埋立をするための土石の掘採は含まないものであること。

二 令第三条第九号、第十二号及び第十三号の規定により指定する深さ及び載荷重は、関係行政機関の意見を聞いた上、海岸の保全に支障のないと認められるものを定めるものとし、不当に国民の権利を制限しないよう考慮するものとすること。

5 ある行為が法第七条及び第八条に該当する場合、例えば法第七条の占用をして土石を採取する場合には、法第七条及び法第八条の許可を同時に必要とするものであり、又法第八条第一項第一号に該当する行為及び同条同項第二号に該当する行為を同時に行う場合においても、両者に対する許可がそれぞれ必要であること。

6 法第七条及び法第八条の許可の申請書については、規則第三条及び第四条に規定しているところであるが、申請書記載事項に変更があつた場合には、すみやかにその旨の申請書を提出させるよう措置を講じておくこと。

7 海岸管理者は、工業用水法の適用を受けない工業用井戸について法第八条第一項の規定による処分をしようとする場合においては、あらかじめ通商産業局長の意見を聞くものとすること。

8 海岸管理者が公衆電気通信法施行令第三条第二項に規定する場合における法第七条第一項、第八条第一項の規定による処分をしようとする場合においては、あらかじめ、水底線路の保護に対する支障の有無について日本電信電話公社又は国際電信電話株式会社の意見を聞くこと。

9 法第八条第一項第三号の規定に基く令第四条の規定による制限行為の態様としては、木材の投棄又は繁留、廃液の放出、特定の重量物を置くこと等の行為があるが、その指示に当つては、関係行政機関の意見をきくとともに、具体的に行為を明示して行うこと。

第五 占用料及び土石採取料

1 法第十一条の規定による占用料及び土石採取料の基準は、規則第五条に規定するところであるが、具体的な額の決定に当つては、現在、河川、港湾又は海岸において徴収している占用料又は土石採取料をも考慮して妥当な額を定めるものとすること。なお、漁業又は農業の経営上不可欠のもの等については、できる限り減免の措置を考慮するものとすること。

2 法第十条第二項に規定する国等からは、徴収しないものとすること。

第六 海岸保全施設の保全

1 法第十三条の規定に基き、海岸管理者以外の者が施行する海岸保全施設に関する工事の設計及び実施計画について、承認し、又は協議しようとするときは、法第十四条に規定する築造の基準に基いて行うこと。なお、当該海岸保全施設が土地改良事業その他他の法律に基く事業に係るものであるときは、当該事業を考慮して行うこと。

2 公衆電気通信法第百一条第一項に規定する保護区域内において、海岸管理者又は主務大臣が海岸保全施設に関する工事を施行する場合及び法第十三条第一項及び第二項の規定により海岸管理者以外の者が当該保護区域内において施行する工事に関し承認を与え又は協議に応じようとする場合には、水底線路の保護について必要な配慮をするものとすること。

第七 整備基本計画

法第二十三条の規定により作成する海岸保全施設の整備に関する基本計画に定める事項は、令第六条第一項に規定するところであるが、この計画は海岸の保全の全きを期するための重要な基本計画となるのであるから、海岸の状況を十分検討の上、すみやかに、作成すること。なお、本計画は、海岸保全施設の整備のための全体計画であつて具体的な工事の実施計画ではないのであるから、その作成に当つて特に配慮すること。

第八 海岸保全区域台帳

法第二十四条に規定する海岸保全区域台帳の調整及び記載事項等は、規則第八条に規定するところであるが、当該海岸保全区域台帳は海岸の現況、海岸保全施設の状況その他土地及び施設等に関する財産の所有区分等を把握しうる唯一のものであり、海岸の保全並びに国民の権利に重大な関係があるのでその正確性を期するとともに、すみやかに調製するものとすること。

第九 主務大臣等

1 各主務大臣の管理の所掌の区分は、法第四十条に規定するところであるが、同条第一項第四号の規定により農林大臣及び建設大臣が主務大臣となる区域のうち、農林大臣又は建設大臣が具体的に専ら所管すべきものは、次の手続により定めるものであること。

一 海岸管理者たる都道府県知事は、右の区域について、農林大臣及び建設大臣が協議して別に定める基準に従い、農林大臣又は建設大臣が専ら所管すべき区域の案を作成し、農林大臣及び建設大臣に提出するものとすること。

二 都道府県知事が右の案を作成する場合には、あらかじめ農地担当部と土木担当部とが協議するものとすること。

三 農林大臣及び建設大臣は、右の案に基いて協議し、専ら所管すべき区域を定めること。

2 法第四十条第一項第三号から第五号までの規定により農林大臣又は建設大臣が主務大臣となる区域につき、土地改良事業及びその計画の開始又は決定、変更、廃止等の事由が発生した場合は、建設大臣及び農林大臣が協議して、所管の変更がなされるものであること。

3 港湾区域又は漁港区域等の決定、変更、廃止があつた場合には、直ちにそれらの区域に係る海岸保全区域の主務大臣及び海岸管理者が変更されるものであること。

4 法附則第二項及び第三項に規定する「現に工事施行中の海岸保全施設に相当する施設」に関する工事は、次の各号に掲げるものであること。

一 昭和三十一年度予算において防災工事として実施中の箇所について、既に大蔵省に協議済の工事

二 前号の工事に係る施設が一連の施設として効用を発揮するまでに生じた災害復旧工事

三 農林省、運輸省又は建設省が既に採択した海岸災害復旧工事及当該工事に係る箇所の増破に基く災害復旧工事

なお、前各号の工事が完成し、又は第一号の工事に係る施設一連の施設として効用を発揮するに至つたときは、当該工事を施行する者は、遅滞なく、当該工事に係る施設を当該海岸保全区域の海岸管理者に引き継ぐものとし、当該施設に関する主務大臣も変更されるものであること。

第十 条例との関係

従前の海岸に関する管理又は取締の条例は廃止する措置を講ずること。

海岸法の施行について

昭和31年11月10日 建発河第107号/港管第2739号/農地第4822号

(昭和31年11月10日施行)

体系情報
名古屋港管理組合例規集/
沿革情報
昭和31年11月10日 建発河第107号/港管第2739号/農地第4822号